シックハウス症候群 建材からの化学物質で体調に異変が生じる・・・

省エネ空調でシックハウスリスクが高まる

東日本大震災による原発の停止で節電が国民に重くのしかかってきている。今夏は空調温度を高めに設定する施設や事務所が増えているが、室温が高まれば揮発性の有機化合物が放散されやすくなって、シックハウスやシックスクールといったリスクが高まってきます。

特定のVOCについては厚生省から指針値が示されているため、新築の建物では確かに空気中のホルムアルデヒドなどの濃度は確実に下がっています。しかし、シックハウス症候群の症状を訴える人は後を絶ちません。その原因には、規制対象外の代替物質にあるといわれています。VOCの総量を抑制する試みも始まっていますが、測定対象物質がはっきりしないままでの総量の測定には限界があるのも現実で、今後VOC対策が一段と重要になってくると思われます。

ケンプラッツ 省エネ空調と代替物質がリスク高める、シックハウス(110721)     (110727)

シックハウス症候群とは

平成10年ごろからと呼ばれる、シックハウス症候群とよばれる様々な健康障害が社会問題化しています。一般的には、住宅の建材や内装材の接着剤、塗料などが含む化学物質が原因とされる健康障害を指しますが、もっと広範囲に室内のカビ、ダニなどの汚染によるものも含めて総称することもあります。新築の家に入居後やリフォーム後に、目がチカチカする刺激感、せき、頭痛、めまい、不眠などの症状を起こすものです。その他にも

  • 頑固な風邪、喘息や皮膚炎などのアレルギー症状
  • 気道の粘膜や皮膚への刺激
  • ダニやカビ、花粉症などでアレルギー症状が増幅されるもの
  • 動悸、慢性疲労、無気力、不定愁訴で自律神経失調症、更年期障害さらには仮病や怠け者のレッテルを貼られることもあります
  • アレルギー性皮膚炎をもつ小児では一般よりも化学物質過敏症の発生する率が高いといわれています

などの症状がおこることもあります。その原因については、解明されていないことも多いが、合板や壁紙の接着剤や防腐剤、防蟻剤などが発散するホルムアルデヒドなどの揮発性化学物質(VOC=Volatile Organic Compounds)が原因と考えられています。

厚生省の定める13種類の揮発性有機化合物(VOC)の指針値

揮発性有機化合物名 室内濃度指針値
ホルムアルデヒド 100μg/m3
トルエン 260μg/m3 
キシレン 870μg/m3 
パリジクロロベンゼン 240μg/m3 
エチルベンゼン 3800μg/m3 
スチレン 220μg/m3 
クロルピリホス 1μg/m3(小児は0.1μg/m3 ) ()(()
フタル酸ジnブチル 220μg/m3 
テトラデカン 330μg/m3 
フタル酸ジ2エチルヘキシル 120μg/m3 
ダイアジノン 0.29μg/m3 
アセトアルデヒド 48μg/m3 
フェノブカルブ 33μg/m3 
総揮発性有機化合物(TVOC) 400μg/m3 

生活環境中に存在する様々な微量の化学物質に反応して、体調が悪化する疾患を化学物質過敏症(CS)といいますが、「発症原因」では室内空気汚染によるもの、すなわち「シックハウス」が過半数を占めます。新築やリフォームで使用される建材やクロスから揮発するホルムアルデヒド等の揮発性有機化学物質)、シロアリ駆除や防虫畳に使用される農薬類、トイレ芳香剤や防虫剤に使用されるパラジクロロベンゼンなどが汚染物質です。室内空気以外では、農薬散布やゴミの焼却による大気汚染や、医療現場、美容院、職場での化学物質などが発症の引き金になりやすいといわれています。

化学物質に対する許容量は個人差が非常に大です。一升瓶とコップ一杯以上の差があるといわれています。これは体質の問題としてとらえるのではなく、許容量を超えてしまうほどに汚染された生活環境の問題(大気汚染と室内空気汚染)、つまり社会問題としてとらえるべきものです。

シックハウスを広義に解釈すると、室内空気汚染を引き起こす要因としては化学物質的要因以外にも

  • 【生物的要因】   ダニ、カビ、真菌類、花粉など生物とその糞や死骸
  • 【粒状物質】     埃、煙、アスベストなどの粒状物質
  • 【電磁波的要因】  電磁波、低周波、音、光、環境放射線などがあります。

原因と予防対策

学物質過敏症は、発症のメカニズムが十分に解明されておらず、ほんの数年前までは疾患の存在自体について、医学界での意見も分かれていたのが現状です。患者は医師から「気のせい」と決め付けられ、家族からも「神経質な」と咎められ孤独にさいなまれていました。

シックスクールという言葉が最近聞かれるようになりました。子供にとって安全であるべき学校が、床に塗るワックスや内装建材、教師のタバコや香水に反応して症状がでてしまうケースです。集中力や思考力がなくなり、落ち着かず感情の制御ができず怒りやすくなるのが典型的な症状です。キレる子供たちが社会問題になっていますが、この原因も案外この化学物質にあるのかもしれません。

シックハウス(スクール)予防のため、平成9年からは厚生労働省では化学物質の
室内濃度の指針値を定めるなど、国は予防策を講じつつあります。平成15年の7月からは、国土交通省は建築基準法の改正でホルムアルデヒドを発散する建材の使用面積を制限するとともに、原則として全ての建築物に機械換気設備による換気を義務付けしました。又、防蟻剤のクロルピリホスの使用を禁止しました。

内装材に使用する建材はホルムアルデヒドの発散量のもっとも少ない等級(F☆☆☆☆ 5μg/m3h以下)、もしくは無垢材を使用する、珪藻土のような塗り壁(ある程度の吸着効果があるといわれています)、オスモやリボスといった有機溶剤を含まない自然系塗料を使用することです。

生物的要因による室内空気汚染の対策は、「掃除」と「換気」です。畳、布団の掃除機かけ、日干しと湿度のコントロールです。これでハウスダストやダニ、カビの大部分が除去可能です。

発症のメカニズム

花粉症は、車の排気ガス汚染が進んだ地域でより多く発症すると報告されています。昨年までは異常がなかったのに、ある年を境に突然発症します。化学物質過敏症も一種のアレルギー性疾患でこれと同じようなパターンで発症するといわれています。つまり、だれもがいつでも発症する危険性をもっているわけです。よく、許容限度をいう表現をされますが、これをすこしでもオーバーすると極微量の被曝であっても発症するといわれています。

重症になると、多種類の化学物質に反応する多重
化学物質過敏症(MCS)に発展し、身の回りのあらゆるものに反応して、絶え間なく苦しみます。日用品に一般的に使用されている塩ビなどのプラスティックに含まれる可塑剤(フタル酸エステルが一般的)は環境ホルモンの一種といわれており、これにも反応してしまう重症者もあるとのことです。当然、睡眠障害を引き起こし、精神的、肉体的にも過酷な状況に追いやられます。ここまで悪化すれば、完全に密閉された金属壁に囲まれ、高性能な空気清浄機で常時管理された無化学物質のクリーンルームの中でしか生活できなくなってしまいます。

参考:化学物質過敏症の原理

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化学物質過敏症は、コップに水が一滴一滴たまっていくことに例えられます。水が化学物質で、コップがその人の許容量です。水がたまって満杯になったところに、さらにもう一滴が注がれるとあふれてしまうのが発症です。その後は注がれるたびにあふれる状況になって、微量の化学物質にも過敏に発症します。症状が重くなると特定の物質だけでなく、複数の物質にまで反応するようになって、逃げ場のない状態に追い込まれます。これを多重化学物質過敏症と呼びます。(出典:Eco Japan 南雄三) (出典:南雄三)
 (出典:南雄三)
 

緊急の治療対策

一番怪しいのはやはりホルムアルデヒドによる疾患です。ホルムアルデヒドの濃度測定をしてみましょう。

これで他のVOC濃度もある程度推定が可能です。従来ホルムアルデヒドは住宅内の建材、家具、接着剤などにしばしば使用されていました。厚生省のガイドラインでは0.08ppm(25℃、0.1mg/m3)ですが、このくらいから臭いを感じます。0.4ppmで目がチカチカしたり、喉がいたくなったりすることが報告されています。発がん性も疑われています。その他にも、トルエンやキシレンなど平成14年の2月までに合計13物質について指針値が追加されました。

対策で最も簡単かつ有効なのは、「換気」と「掃除」です。特に窓を閉め切りがちな夏(冷房)と冬(暖房)には換気を定期的に行ってください。窓を開けることと、できれば局所換気扇を常時運転(トイレや風呂場)することです。掃除機が微粒子状のダストを除去する能力には、機種によって相当のバラツキがあるようですので機種の選定には十分注意して下さい。平成15年の建築基準法改正で、新築住宅にはすべての居室に換気設備を設置して、常時(24時間)換気をすることが義務付けられています。電気代がもったいないからと言って、決して換気扇のスイッチをオフにしないでください。住宅の内に、少量の空気の流れを作ってやることが最大の健康対策です。

次に、汚染源を除去することです。怪しい汚染源(ガスと粒子状物質)は、

  • タバコ(一番怪しいのがこれ)
  • ダニ、ペット、カビ(壁内結露で大量発生)
  • 壁紙、家具、カーテン、衣類
  • 開放型のストーブ(直焚式石油、ガスストーブ)
  • 洗浄剤、接着剤
  • スプレー商品、殺虫剤・防虫剤・防カビ剤、抗菌製品
  • 化粧品、シャンプー、香水、ヘアースプレー

ですので、これらを極力使用しないようにして下さい。

それでも改善が見られない場合は、ベイクアウトという方法があります。これはストーブなどの加熱装置を用いて、室内温度を上昇させ、建材などに含まれるVOCやホルムアルデヒドを強制的に揮発させてしまうやりかたです。室内温度を30~40℃に数日間保つことが効果のポイントといわれていますが、その具体的な方法や効果についての定量的な研究がはじまったばかりです。VOC除去の有効な方法とされてはいますが、過度の過熱による火災などの原因にもなりかねませんので注意が必要です。

さらに生活面での工夫も必要です。項目のみ箇条書きにします。

  • 身体に取り込む化学物質の総量を減らす
    1. 原因の家、部屋から出る
    2. 室内の換気を冬でも徹底する
    3. 身の回りの化学物質は戸外に出すかポリエチレン袋に隔離する
    4. 食物はできる限り自然食品をとる
    5. 水道水に注意する(水質検査)
    6. 天然素材の生活用品を使用する
  • 体内に蓄積された化学物質の分解・排出を促進する
    1. 化学物質は体脂肪に蓄積されますので、体脂肪を減らすための運動、発汗を促す低温サウナが有効といわれています。
    2. 有毒物質の排出にはビタミンが必要で、科学物資過敏症の患者は慢性的にビタミン不足になっているといわれています。ビタミンの摂取を心がけましょう。詳しくは専門医に相談してください。
  • 規則正しい生活、リズムある生活、ストレスを避ける生活
  • 電磁波を避ける

化学物質過敏症と電磁波過敏症の両方に罹患するケースが増えているといわれています。電磁波過敏症は、他のひとが何も感じない極微弱な電磁波でも、頭痛、めまい、吐き気、視力障害や倦怠感など多種多様な症状を引き起こすといわれています。

シックハウス症候群の専門外来が開設されました

シックハウス外来が平成21年10月に京都の病院で開かれました。「シックハウス症候群」と「化学物質過敏症」の診断・治療をしてくれるようです。

医療法人社団医聖会 百万遍クリニック
http://www.iseikai.jp/sisetsu/hyaku/index.html

〒606-8225 京都市左京区田中門前町103-5
京都市バス 百万遍下車 北へ約200m
京阪電車 出町柳駅下車 叡電口から東へ約800m (徒歩約12分)

「シックハウス外来」について

診察開始日:平成21年10月22日(木曜日)、以後毎月第4木曜日が診察日
診療時間:午前9:00~午前12:00(毎月第4木曜日)完全予約制
担当医師:内山巌雄(京都大学名誉教授、元国立公衆衛生院労働衛生学部長)
予約受付電話番号:(075)791-8202

内山医師は国立環境研究所特別研究員や京大教授を務め、シックハウス症候群では厚生労働省の対策指針作りに携わり、平成21年春の京大退職を機に専門外来を開くことにした。

診察は、問診が基本で、血液やアレルギーなどの検査によりシックハウス症候群が疑われる場合は、原因物質の除去などの改善策を示す。原因物質が分からない場合は、医師や弁護士などでつくる「住環境疾病予防研究会」と連係し、室内調査など専門家のサポートが得られる、とのこと。

内山医師によれば、「この病気は気が付きにくい物が原因の場合もあり、専門的な診察が必要。化学物質過敏症では外出が困難な人もおり、何とか社会生活を送れるようにしてあげたい」と話している。

空気清浄機

家庭用空気清浄機の普及はめざましく、その効果もかなりのものが発売されているようです。但し、その機能は汚染ガスの除去よりも、タバコの煙やハウスダスト(ダニの死骸や糞)などの微粒子状の物質の除去に主眼をおいたものが中心ですのでご注意ください。平成21年からは、ウイルスを除去する機能のついた商品が多く出されています。

フィルター式とイオン式がありますが、除去の対象となる粒子状物質の大きさなどで効果がかなり異なりますので用途に応じた機種の選択をして下さい。最近は光触媒方式のものがでていますが、定量的な効果は未だ多くは解明されていません。ガス状の物質の除去は過度の期待は禁物です。ダニがアレルゲンとなっている場合は、ふとんの丸洗いや丸干しと掃除が最も簡単かつ有効です。

詳しくは、空気清浄機をご覧ください。

炭、吸着シート等

室内化学物質汚染を除去(低減)する効果ありとして、各種の日用品、建材、壁材類が市販されています。活性炭などは確かに効果がありますが、定量的にどの程度なのかはまだあまり明らかにされていません。メーカーの取扱説明書をよくご検討のうえご使用ください

室内空気汚染の実態調査

国土交通省が実施した室内空気中の化学物質濃度の実態調査によれば、ここ数年、新築住宅におけるホルムアルデヒドの濃度や基準値を超えるケースの割合は低い数値で推移しているとのこと。これは2006年の改正建築基準法による、ホルムアルデヒドを放散する建材等の使用制限と24時間換気設備の設置が義務化されたことによります。更に、住宅の品質確保推進法では、性能表示を行う場合は、ホルムアルデヒドの濃度表示が必須項目になっています。

室内空気環境の測定サービス

参考までに、建材大手の大建工業(DAIKEN)では、岡山に「環境測定分析センター」を設置して、シックハウス対策アスベスト問題、騒音対策のための下記測定サービスを実施しています。
  1. 「室内空気質測定」 VOCの測定
  2. 「石綿分析」 アスベストの検知
  3. 「室内環境測定」 ダニアレルゲン測定やカビ菌種同定
  4. 「防音性能測定」

お問い合せは、大建工業へ直接お願いします。