「住まい情報館」の運営・実施要領について 平成23年7月26日 公式提案

はじめに

平成23年3月の「住宅リフォーム需要の創出と既存住宅流通活性化に関する一考察」で、中小の住宅建築事業者(以下「事業者」[1]と称す)の活性化支援対策の一環として、消費者向け相談窓口「住まい情報館」の実験的運用を提言したところ、複数の予期せぬ方々からも暖かい激励と賛同の声を賜りました。
 
もっと詳しい話を聞かせて欲しい、という声や質問も少なからずいただいたので、「住まい情報館」の具体的な運用方法や費用負担に関する実施要領(案)を下記の通り取り纏めることにしました。
 
ご一読いただき、ここで筆者が提言する「住まい情報館」の実施に向けて関係各位による積極的な討議にご利用いただき、その結果、国が推進する住宅政策に沿う方向で、住宅リフォーム需要の創出等の具体的な成果に貢献することができれば本望である。
 
平成23年7月26日
672-8057 姫路市飾磨区恵美酒414
今村産業株式会社
代表取締役 今村純一
 
提言2:teigen2

[1] ここでは「事業者」とは、「住まい手」(最終消費者)から直接受注する所謂「元請」といわれる住宅建築関連事業者で、規模的には従業員数で30名、年商で10億円程度以下の規模の中小零細の事業者をいう。建築業の許可を取得する義務のない小規模リフォーム工事に従事するものや本業が家電販売やサッシ工事、左官工事業、LPGガス供給者等であっても、「元請」である限りは、ここでの「事業者」に含める。大手ハウスメーカーや建材卸などの流通業も住宅事業者ではあるが、「事業者」には含めない。特にそれらの事業者を意味する場合には、その旨を記して、「事業者」と区別する。

住まい情報館のコンセプト

ここでは、先ず誤解を避けるため、筆者の考える「住まい情報館」のコンセプトを定義しておく。
 
1.「住まい情報館」のミッションは何か?
 
「住まい情報館」の役割は、国民の生活基盤である住宅の質向上のため、既築・新築を問わず、住宅の耐久性と耐震性の強化による長寿命化や省エネ・創エネ性を高め、快適な住空間と環境負荷の少ない住宅を実現する上で必要不可欠な「(中小)事業者への啓発と育成」と「住まい手に対する正確な情報提供」である。
 
それは同時に究極の地場産業である「住宅リフォーム産業」の活性化と地域振興、雇用の確保に直接結びつくもので、現下の日本経済が直面するデフレギャップ解消の内需拡大型の需要では最大のポテンシャルを持つものである。【住宅は最大の内需型産業のポテンシャル】(文末脚注[i]に引用)があり、高齢者と子育て世代の住み替え支援策による需要創造効果も含めれば、2020年の顕在化市場は39兆円とされている。(電通の市場予測[1]による)
 
住宅エコポイントは、申込みが当初の予定をオーバーする勢いで、7月末までの工事着工分までで受付中止となったが、景気浮揚策としては一般消費の内需を直接刺激するタイプのもので、その乗数効果は大きい。住宅エコポイントを更に利用しやすくした上で早期に再開・継続実施することを強く要望する。「住まい情報館」事業にはこれらの施策を複層・横断的に補強し、潜在需要を顕在化して政策の波及効果を相乗的に拡大する効果がある。
 
2.「住まい情報館」の顧客は誰か?そしてその活動が目指す「成果」は何か?
 
「住まい情報館」の顧客は、「事業者」と「住まい手」の双方である。「事業者」が実現したい価値は、「高い品質・性能の住宅や住環境と住まい方を提供すること」であり、住まい手が求める価値は、「自分に合った住まいをリーズナブルな価格で手に入れること」である。両者の価値は、個々の売買取引の次元ではなく、より高い次元で住宅を社会的な存在として観れば矛盾するものではない。「住まい情報館」が目指す成果は、事業者と住まい手の価値実現、つまりいい仕事ぶりと新しい住まいに対する双方向の高い満足レベルとその積算量である。つまりは中古住宅の流通量=住み替え拡大とリフォーム需要の顕在化=住まいの質向上である。この成果は、事業者の受注件数と金額で計数化が可能で、政策の有効性が検証できるものである。
 
「住まい情報館」は、住まい手にリフォームに関する情報収集で従来にはない新しいタイプの手段を提供する。リフォーム工事の受注を目的としない為、住まい手にとっては、しつこい営業をされずに済む安心がある。そこが、国がすすめる住宅施策の一翼を担う存在であることが公報で周知されれば、より大きな成果を実現することが可能となる。
 
3.「住まい情報館」には、どんな能力が必要か?
 
「住まい情報館」が成果を上げるには、「事業者」と「住まい手」の双方の視点から複眼で現場を理解できる能力が必須である。現場とは、物理的な意味での現場だけではなく、住まい手の家族構成やライフスタイル、家族の将来計画と人間模様など目で見ることのできないものも含む、より広い意味での「現場」である。古今東西、ただ一つとして全く同じ現場はない。
 
この現場を正しく理解するには、建築、土木、設計、構造、設備、意匠、エネルギー、環境、土地、税制、金融、法律、歴史や文化・伝統、健康、医療、介護、保険などあらゆる分野にまたがる超人的な知識と経験を要する。かといって、これら全ての分野でエキスパートであることを1人の人間に求めるのは酷な要求というもので、前回のレポートで指摘したとおりである。
 
では、どうするか? 各分野のエキスパートを有機的に連鎖するネットワーク型の組織を構築して、「住まい情報館」の活動を側面支援する必要がある。そこでの活躍を期待されるのが、各分野における専門家でいわば知恵袋。これらを「パートナー」と位置づける。住宅設備や建材メーカーや建築設計事務所、電力・ガスなどエネルギー事業者、医療機関や介護施設、金融機関、更に行政組織などがパートナーを構成する一員である。
 
ただ、取り纏めをするものがいなければ「パートナー」は有機的な機能を発揮することができない。その役目を果たすのが、「住宅建築コーディネーター」である。「住宅建築コーディネーター」の役割と成果への貢献手段は、前述のレポートで述べたものを文末脚注[ii]に再引用したので、参照してくださるようお願いする。
 
上述のコンセプトを踏まえた上で、より多くの成果が上がる「住まい情報館」の理想的な運営体制は何か? そしてその費用対効果を踏まえた上で、どんなビジネスモデルが構築可能か、その具体的方法とロードマップは? を個別に検討する。
 


[1] 中古・リフォームの潜在需要について~消費者ニーズの視点から~(平成23年5月30日 中古住宅・リフォームトータルプラン検討会第2回会議配付資料より)


[i] 【住宅は最大の内需型産業のポテンシャル】
住宅建築は新築であれ改修であれ、基本的に地場産業で多くの雇用を創出する内需型産業である。産業政策としての住宅政策は、同時に最も効率の高い雇用対策に直接結び付く。しかも住宅はデフレギャップを解消するための需要では、規模の面で最大のポテンシャルを持つ。
「国民の生活が第一」のスローガンにあるように、モノの消費ではなく、生活の質そのものを考える風潮が芽生えてきた。ようやく日本も「住まい」を真剣に考える成熟社会になりつつあるのは嬉しい。
 
[ii]【住宅建築コーディネーター制度の導入】
 
一言でいうと住宅は「ややこしい」。リフォーム工事は新築よりもっと難しい。トラブルも多い。なぜか?それは、関係する分野があまりに多いからである。建築、土木、設計、構造、設備、意匠、エネルギー、環境、土地、税制、金融、法律、歴史・文化・伝統、健康、介護医療、保険などあらゆる分野にまたがる広汎な知識を要求される。かといって、全ての分野のエキスパートであることを求めるのは現実的でない。現実と期待のギャップが生まれる。これらを有機的に取り纏めるには、ネットワーク型の組織に頼るしかない。
 
それぞれの分野の専門家と有機的に連携できる立場にある人が中心になって、個々の案件をプロジェクトチーム的な運用で賄えるような民間の組織である。法人格の有無や組織の形態は問わない。これを仮に「住宅建築コーディネーター」と名付ける。リフォーム需要の創出には「住宅建築コーディネーター」の機能を果たす人の存在が不可欠である。しかも、全国の津々浦々で多数が必要だ。
 
「住宅建築コーディネーター」は所属する組織(団体・会社)の支援を得て、後述の「住まい情報館」で住まいに関するあらゆる相談の受付と調整の窓口になって、ワンストップサービスを提供する。リフォーム工事内容や材料のアドバイスだけでなく、省エネと環境負荷、長寿命化の手法、耐震力。更に、土地探し、住みかえ支援、建物検査、住宅ローンの取次、建築士や工事業者の紹介、瑕疵保険、住宅エコポイントなど住宅建築と改修工事に関するあらゆる分野の総合相談窓口となって、個別分野のエキスパートと連携しながらプロジェクト進行する役割をもつ。住宅建築とリフォーム工事にまつわるトラブルや紛争処理の取次も、事業者と消費者の双方からニーズがあるだろう。住宅関連の補助事業全般に亘る総合的な理解も不可欠である。インフィルだけでなく、エクステリアと植栽に関する知識も必要だ。
 
関係する分野が不定型に広く、さりとて専門家ではなく、利害相反関係にある業種(例えば住宅検査と建築工事、設計監理と施工)にまたがる内容を含むので、公正性と第三者性の担保に難ありで、公的な資格制度にはなじまないかもしれない。民の知恵の発揮のしどころだが、臓器の移植コーディネーターやFP(ファイナンシャル・プランナー)のようなものをイメージすればいいと思う。運営面では、個別分野の専門取引とコーディネーション(調整)業務を切り離すプロジェクトマネジメント方式が現実的である。「住宅建築コーディネーター」の普及には、どんな形での国の支援と民間活力の融合が相応しいのか、専門家の叡智による積極的な論議を期待したい。
 

1.運営の主体

運営の主体は、継続性の観点やパートナーとの協働力から「個人」では限界がある。やはり「法人」のような組織体であることが必要である。ならば、どんな法人が相応しいか?その指揮下に「住宅建築コーディネーター」を配し、「パートナー」と渾然一体となって顧客、つまり「事業者」と「住まい手」双方の価値を実現するためには、地域における地元力や地域密着力が他のなによりも必要不可欠である。
 
その前提で筆者の考える「住まい情報館」の運営主体の資格要件は、下記のとおりである。
 
(1) 住まい手のリフォームでは、キッチンや風呂、トイレ等水廻りのリフォームが圧倒的な人気であるので、住宅設備や建材に関する幅の広い知識と現場経験が不可欠である。その意味では、複数の住設建材メーカー品を取扱う流通会社(問屋)が有利ではある。
 
(2) 元請たる事業者(工務店・リフォーム会社)との接点が多数あること。直接の取引関係があれば、その事業者の仕事ぶりや近所での評判、信用度がよくわかるのでなお良い。
 
(3) 住まい手である最終消費者との接点があることも必要。なかでも、住宅エコポイントの受付窓口業務をした実績のある住宅瑕疵保険の取次店は運営主体として有力な候補である。
 
(4) 住宅建築に関する制度や規則の他、幅の広い知識と経験、特に施工に関するノウハウと人材を有すること。
 
(5) 省エネ・エコ住宅の設計に必要とされるエネルギーや熱量、換気・暖冷房、給湯設備、照明に関する豊富な知識と現場経験を有すること
 
(6) 金融機関や不動産業界、建築確認検査機構、行政との幅広い接点を有すること

2.「住まい情報館」の使命は?

「住まい情報館」は顧客である「住まい手」と「事業者」の求める価値を実現することが使命である。
 
ならば、どうやって顧客の求める価値を実現するか?一般的に住宅建築、特にリフォームに関しては、住まい手が親しくしている友人からだけでは正しい知識と情報を十分に得ことができない。質量の両面で十分でないことが多い。なぜならリフォーム経験の頻度が圧倒的に少ないからだ。だからこそ「正しい知識と情報の伝達」が「住まい情報館」の主たる使命たりうる所以となる。
 
アンケート調査[1]によれば住宅リフォームを実施する際に、相談を持ちかける先は、圧倒的に地元の工務店や大工・職人、リフォーム会社が多い。それは、やはり地元で信頼のおける会社に頼んでおくとトラブルの発生した時などの対応や保証で安心だからである。ところが、リフォームする際に最も困ったことはといえば、誰に相談すればいいのか分からない、費用の目安が分かりにくい、相談窓口がどこにあるのか分からないので仕方なくハウスメーカーの住宅展示場や家電量販店に頼んだ、というケースも多々ある。偶々訪れた訪販業者に依頼した、ということもある。
 
リフォーム工事には、目に見えない不安がいつもつきまとう。どんな商品や材料を使って、どのくらいの工期がかかって、どんな工法で施工するのかが見えないので、費用の目安がつかない。業者の評判や信頼性にも不安を感じてしまう。この業者に頼んだら、どんな材料をどう使って、いくらくらいの費用でどのくらいの工事期間でやってくれるかがわかれば安心だ。省エネタイプの新商品や熱エネルギーの詳しいことは、工事業者自身も知らないことも多い。
 
「住まい情報館」では、会員事業者とリフォーム希望者が同伴で訪問していただき、具体的な施工方法や使用する材料などを事業者自らがサンプルや模型、プレゼン資料などを使って説明する。必要とあらば、複数の選択肢の中から比較説明するので、自ずと価格に対する不安や業者に対する信頼度も高まってくる。事業者の不慣れな部分は、「住宅建築コーディネーター」が補足説明をする。コーディネーターだけでは分からないことは、運営者のネットワークを駆使してパートナー集団にかけあって問題の調査や解決、回答にあたる。
 
運営者は地域の多くの事業者と取引関係で結ばれているので、その事業者の評判や得意分野、経験、強みも良く分っているので、適格なアドバイスが可能である。どのリフォーム業者に頼めばいいのか分からないといった住まい手には、その工事なら○○の○○さんがいい、などと会員事業者のなかから特定の担当者を指名して紹介することも可能である。
 
たとえ運営者と取引関係がなくても、流通会社ならば地域での評判くらいはよくわかる。もし、全く知らない業者だったら、主だったメーカー2~3社に聞き合わせすれば済む話だ。評判の良いところは現場数も多いのでメーカーも良く知っている。新築住宅の場合だけだが、瑕疵保険の申込み現場数でおおよその実績は分かる。経験の少ないところや、トラブルの噂、標準採用している商品やグレードなどもすぐわかる。商取引に直接関係することなので、比較的確度の高い情報が得られる。
 
どのリフォーム業者に相談すればいいのか分からない人や単独での情報収集を希望する潜在需要者も大歓迎である。どこにどんな業者がいて、これまでにどんな工事を手掛けてきたかの実績を知ることも大切な情報収集だ。家電量販店やホームセンターと地場の大工・工務店との得意分野の違いを知ることも大事だ。
 
ちなみに、筆者の体験では、馴染みが浅く筋のはっきりしないリフォーム希望者を事業者に紹介するのは、気が引けるし躊躇もある。相手が大事なお客様であればなおさらだ。紹介を受けた事業者も、紹介された人に馴染みがなければ、あれこれ心配もしなければならないし、注意散漫になりがちだ。
 
「住まい情報館」での紹介の運営には工夫がいる。望ましいのは、事業者リストの中から、名前だけでも知っている近隣の業者を対面で2~3社を選び、後は自分で直接連絡を取ってもらって業者を決めるのが後々のトラブルも少ない。自己責任の世界だ。もちろん、紹介責任があるのでトラブルで相談事があればいつでも大歓迎。そうやって「住まい情報館」の地元での評判を徐々に築きあげることが、急がば廻れの結果をもたらす。ここが地元力を活かせる「住まい情報館」の強みである。量販店商法に徹して外注の「協力業者」には過度の負担を強いるホームセンターや家電スーパーとの差別化ができる分野である。

[1] 出典:中古住宅・リフォーム市場の現状「リフォーム工事における消費者サイドの調査結果(国土交通省(中古住宅・リフォームトータルプラン検討会第1回配布資料3)
 

3.「住まい情報館」の運営方法

「住まい情報館」の運営に際して最も留意しなければならないのが、公正性と専門性である。
 
リフォーム工事の受注は、「住まい情報館」の目的ではない。あくまで「事業者」支援が目的なので、その利用が特定の事業者だけに偏らない公平な運営が求められる。それには、地域内で「住まい情報館」の利用を希望する事業者をあまねく会員募集し、会員の、会員による、会員のための運営をすることが望ましい。会員の募集にあたっては、国庫補助事業に相応しく、殊更な資格制限は可能な限り避けて、オープンな運営をすることも必要。
 
と、同時に高い専門性も要求される。専門性は、専門分野のエキスパートをパートナーとして運営に参画してもらうのが現実的。具体的には、住設機器や建材メーカー、建築設計事務所や建築士、住宅ローン等金融機関、税理士やフィナンシャルプランナー(FP)、住宅瑕疵保険会社、建築確認検査機構等がその候補である。
 
会員事業者とパートナーが三位一体で融合して成果を上げるには、その間の連絡と調整業務を行う事務局を設ける必要がある。事務局は、「住まい情報館」の主体である法人が責任をもってその運営にあたる。
 
「住まい情報館」は事務局を担う法人と会員事業者、パートナーを構成要因とする任意団体(例えば「○○の住まい情報館協議会」など)で運営することを想定しているが、補助事業ということで必要であるならば将来的にはNPO法人や社団法人等の設立も視野にいれることも可能。
 
会員事業者は、事前予約して「住まい手」たる建築主と同伴来場してご利用していただくことが原則。そこに会員事業者の補助を担う「住宅建築コーディネーター」を配置し、その円滑かつ効率的な運営を図る。必要に応じて、パートナーから協力と専門アドバイスを得る。
 
近隣にある住宅設備メーカーのショールームで見ることのできるものは、原則は展示しない。「住まい情報館」からそちらに来場者を誘導する。「事業者」ではないので、受注活動のためのモデルルームや住宅展示場は持たない。各種の模型やサンプルで部材や材料と工法を説明する。これは事業者によって異なる。例えば、断熱であれば、各種断熱材をサンプル的に実装して、外断熱と内断熱(充填)工法の違いを見せる。どちらがいい、というものではない。それぞれに特長があり、最も大切なのは正しい施工方法だということを目で見て理解してもらう。
 
同様に、壁構造の違いや通気工法の仕組みやサッシ周りの雨仕舞いの施工順序を展示する。耐震補強用金物の正しい配置方法や使い方を展示する。太陽光発電であれば、トラブルに結びつきがちな点を注意事項として予め知らせておくなどの予防措置を講じる。
 
標準的なリフォーム工事の総費用の目安が分かるようなモデルプラン集や実例集を整備して、リフォーム価格の透明性を確保することも必要だ。そうすることによって、住まい手の啓発と誤解や不注意による無用のトラブルや法外な請求を受けたなどのクレームの発生を予防する。これらの措置を講じれば、同時に悪徳リフォーム業者の排除にも有効である。
 
住宅リフォーム瑕疵保険のあんないや住宅設備機器と工事の長期延長保証サービス[1]の運用例と住宅履歴や設備台帳の整備等のソフト面[2]でのサービスを充実して、利用促進を図ることも大切である。リフォーム希望者に人気のあるキッチンやお風呂など、水廻りの設備機器では故障時の修理やメンテナンスが心配だ、というアンケート結果[3]があるが、これには長期延長保証が正解である。リフォーム瑕疵保険の保証対象に組み入れるのも一つのアイデアだ。修理対応のノウハウをもつ流通事業者が運営に協力すれば消費者の安心も格段に広がる。
 
事業者に向けては、定期的に下請職人の技術研修会や各種の住宅関連法規と制度の説明会を開催して、制度の普及を図る。住宅の省エネ化と畜エネ・創エネも重要な情報伝達の課題である。長寿命住宅のつくり方も更に啓発して、普及促進を図る必要がある。
 
参考までに、「住まい情報館」の実験モデル館概要(案)を別紙1に掲載したので、参照頂きたい。
 


[1] 「5年保証のIGS」は、今村産業株式会社が全国に先駆けて平成13年にスタートした住宅設備の長期延長保証サービス。詳しくは、姫路の住まいhttp://himeji-sumai.com/page0186.html
 
[2] 「あんしん台録」は、住まいに関するあらゆる情報を記録・保存するデータベースソフト。機器の故障や修理、経年劣化や定期点検時期の情報などが容易に登録、管理できるもの。詳しくは、http://ansin-dairoku.com/index.php
 
[3] 前出:中古住宅・リフォーム市場の現状「リフォーム工事における消費者サイドの調査結果(国土交通省(中古住宅・リフォームトータルプラン検討会第1回配布資料3)

4.「住まい情報館」の設置と運営に要するコスト

「住まい情報館」設置時の建物などの初期費用と運営に要するランニングコストの概算を示す。
 
大まかにいって、最低で初期費用に35百万円とランニングコストで年間10百万円が発生する。
 
初期費用 内 容 百万円
建物建築費 木造軸組み2階建、建築面積20坪、延床面積35坪
部位の実物比較展示を含む
20
展示物費 展示用設備機器・商品整備/模型・説明用パネル 10
備品 オフィス家具・備品・通信設備 5
  小 計 35
運営費用/年   百万円
地代 敷地面積40坪(坪2000円)駐車場含む 1
賃金 スタッフ1名(住宅建築コーディネーター)、補助者 6
運営費 光熱費・通信費・印刷費/維持管理・修繕費 3
  小 計 10/年
 

5.「住まい情報館」の全国レベルでの整備

「住まい情報館」を全国に整備するとすれば、店舗数としてどのくらいが最適か?という疑問がでてこよう。欲をいうなら江戸末期の藩毎に1ヶ所、つまり約270ヶ所だが、これは正直多すぎる。その正解は住宅設備メーカーのショールーム数にある。パナソニック電工が70ヶ所、TOTOが125ヶ所、新生LIXILで100ヶ所(予定)、タカラスタンダードが170ヶ所、クリナップで105ヶ所である。各メーカーの立地場所はほぼ重複しているので、最終的には100~120店あたりが妥当な拠点数ということになる。

6.コストの回収と国からの補助

「住まい情報館」と住宅会社の「モデルハウス」や「住宅展示場」はどう違うのか? モデルハウスであれば、多くのハウスメーカーが商業運用している。中小工務店のローコスト住宅でもモデルハウスを設置して集客している。なぜ、同様のビジネスモデルが「住まい情報館」では成り立たないのか?
 
この疑問に応えるには、先ず両者の違いを理解することが肝要である。
 
【住宅展示場】と【住まい情報館】の対照比較・相違点
  住宅展示場
モデルハウス
「住まい情報館」
運営の主体 ハウスメーカー等元請会社 非元請会社
(建材卸等の流通会社)
目的・使命 受注促進のための広告宣伝 情報提供と啓発による
間接的な需要創造活動
対象工事 新築住宅(高額工事) 少額の取替リフォームが圧倒的~
大規模リフォームまで多様
手間
運営者の粗利率 大(新築元請) 小(納材業者)
運営の難易度 比較的容易 複雑・高コスト・ベテラン配置
投下コストの回収 可能 販売量の確保さえできれば
新築住宅の売価に上乗せ回収可
困難 売価に上乗は不可
需要創造活動に伴う商品の
販売増で徐々に回収するしかない
 
住宅展示場との最大の違いは、運営者の直接的な受注促進が目的ではないことだ。間接的には需要創造による販売増の効果がみこめるだけで、非元請事業者による運営では、投下費用と運営費の回収が著しく困難であることは一目瞭然で、リスクマネーの投下には躊躇がある。だからこそ国の確たる住宅政策の下、民間活力を利用しつつ、国と民が役割分担をして事業者の育成を効率的に推進してゆく必要がある。「失われた20年間」の長き不況と資産デフレで、地域の中小事業者は多くが淘汰され、技術継承や経営革新もままならずその財務内容を毀損しあえいでいる現況では、国民の生活を守るために効果的な中小事業者支援は急務である。
 
参考までに、もし「住まい情報館」を元請事業者(施工業者)が運営すればどうなるかも検討しておこう。第一に、同業の競合他社への広がりが期待できないので地域での敷衍性がなくなる。第二に、複数の工法を選択肢として提示するのは、その事業者が集中すべき特色を毀損する結果になり、住まい手の不信を煽るので逆効果。よって、賢明な事業者は躊躇する。過去に複数のベンチャー経営者が大型の展示場と展示商品に資本投下して、一時的な集客はできたが、時間の経過とともに資金面だけでなく、施工や人材面で多くの困難に直面。あえなく市場から撤退を余儀なくされ倒産の憂き目にあった例もある。
 
ならばどれだけの国庫負担が妥当か?「住まい情報館」設置の初期費用の内、建物建築費と展示物費の2/3、つまり20百万円の国庫補助があれば、民間でもなんとかやってゆけるレベル。
 
国庫負担以外で運営主体が投下したコストは、需要創造活動に伴う商品の販売増で賄う以外にはない。困難と時間を伴うが、不可能ではない。ランニングコストの一部分は、会員事業者から若干額の会費を徴収することで賄えるが、不足部分は民間の知恵でローコスト経営に徹することが必要。
 
1ヶ所あたり20百万円の国庫負担で、仮に全国で100ヶ所の設置であれば20億円だ。5年程度の時間をかけて徐々に整備してゆくなら、平均で年間4億円の予算手当が必要だ。初年度はせいぜい2~3ヶ所程度の少ない数で実験的にやってみて、試行錯誤を踏まえながら、実績が上がれば徐々に増やしてゆくのが効果的。それによる波及経済効果は膨大だ。国による広報活動や周知のコストはここには含んでいない。
 
運営のノウハウが蓄積されれば、熱源機器や創エネ機器など展示用のものは、実機よりむしろ模型の方が分かりやすくて安上がり。地域の特色や伝統もあろうから、国庫補助の大枠だけを決めて、委細は運営主体の創意と工夫に委ねるようにすれば、より大きな成果をもたらすことが可能である。

結びに

「住まい情報館」に関する筆者のイメージや思いを書きつけたが、本来ならばこの類のものは事業者が事業活動の一環として取組まねばならぬものかもしれない。しかし、それが可能な時は既に過ぎ去ってしまったように思う。住宅が、無類の広範な知識と経験を必要とされるものになったにもかかわらず、氷河期の事業環境に晒された地域の中小事業者には単独では手の届かぬ存在になりつつある今こそ、現実的な支援策が必要であることを痛感する。
 
仕事になる需要さえあれば、雇用を通じて必ず人は育つ。住宅は社会的な存在であり、国家と国民の安泰の根幹をなす。最低限の居住空間は、憲法に定められた基本的人権であり、その意味で住宅政策は社会福祉政策でもある。とりわけ、大工など住宅建築に従事する職人の高齢化が限界に到達しつつあることも鑑みれば、最小限の技術と知識をもつ専門職人等の育成も市場の環境整備や需要創造活動と並行して推進する必要のある焦眉の政策課題である。
 
以上